店舗経営に必要なマーケティング手法とは?マーケティングはなぜ必要?
近年、モノやサービスを販売するときにはマーケティングという考え方が重要視されています。店舗経営、特にスーパーマーケットなどの小売業ではマーケティングの考え方はまだあまり浸透していませんが、店舗経営にも十分活かすことが可能です。
むしろ、モノが売れないとされる現代において顧客のニーズを汲んだマーケティングを行うことは、店舗経営でも重要なことです。今回は、マーケティングの必要性や手法を詳しく解説します。
目 次
店舗経営におけるマーケティングの必要性
店舗運営にマーケティングが必要な理由を解説します。
マーケティングとは、企業と顧客の相互関係
日本マーケティング協会では、マーケティングを以下のように定義しています。
「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」
企業は一見すると単に儲けさえ出せば良いと思われがちですが、企業の義務とされているのはそれだけではありません。近年のSDGsの気運の高まりなどを見ても、企業と顧客(ステークホルダー)との関係性を重視する傾向にあります。
これはすなわち、顧客のLTVを重視し、一時的な利益ではなく継続的な利益を得ることや、企業の側から新たな市場を開拓し、顧客の潜在的なニーズを汲んで需要創出することにもつながります。
また、「マーケティングの神様」「近代マーケティングの父」とも呼ばれるフィリップ・コトラーは「マーケティングとは、企業がターゲット顧客に対してより優れた製品・サービスと価値を生み出し、コミュニケーションし、届けることだ」と述べています。
つまり、マーケティングにおいては企業が一方的に利益を得るのではなく、顧客も商品を購入することで利益を得る、Win-Winの関係を築く必要があります。
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マーケティングが必要とされる理由
現代は、シェア文化の台頭や長引く不況などの影響により、モノが売れない時代といわれています。さらにはIT・インターネット技術の普及によりビジネスモデルが変わり、従来のマーケティング手法(マス広告による不特定多数に向けたプロモーションなど)が成立しなくなってきました。
前述のマーケティングの定義や主流の考え方もふまえると、モノやサービスを売るためには企業が販売したいものを売るのではなく、顧客が買いたいものを売る必要があると言えます。マーケティングが求められているのは、このためです。
店舗マーケティングを行うメリットとデメリット
店舗マーケティングにはメリットとデメリットがあります。実施の際はメリットを最大限に活かし、デメリットによる影響を最小限にできるような分析や施策を実施しなくてはなりません。
店舗マーケティングにおけるメリットとデメリットを知っておきましょう。
店舗マーケティングのメリット
店舗マーケティングには以下3つのメリットがあります。
- 消費者のニーズを把握できる
- 営業活動の効率化
- 事業計画の精度向上
店舗マーケティングを実施すれば、商圏で求められている商品やサービスを正確に把握し、提供できるようになります。これは集客や顧客のファン化における、重要な要素です。
また、顧客の購買行動や傾向をマーケティングから理解できれば、営業活動の効率化にも役立ちます。効果の思わしくない営業活動を廃止し、効果的な活動に注力できるようになれば、売上や営業利益にもいい影響を与えられるでしょう。
店舗マーケティングが役立つのは、集客や売上にかかる効果だけではありません。マーケティングを通して得た情報は、顧客獲得だけでなく事業計画にも活用できます。
より実践的かつ具体的な事業計画を立案したい場合にも、店舗マーケティングは有効です。
店舗マーケティングのデメリット
店舗マーケティングはさまざまな効果が得られる反面、デメリットもあります。そのひとつが、店舗や目的ごとに適切な手法・対策が異なる点です。不適切な方法を実施すると、コストや時間のロスにつながりかねません。
店舗マーケティングを実施する際は、目的を明確にしましょう。そのうえで改善や向上させたい内容に沿って手法や対策を選べば、デメリットによる影響を最小限に抑えられます。
このほか、消費者ニーズやトレンドに合わせて定期的な分析が必要なのも、店舗マーケティングにおけるデメリットといえるでしょう。
消費者ニーズやトレンドは、短時間で変わります。マーケティングを実施する際は、定期的な評価と改善が必要です。当然そのためのコストもかかります。
企業や店舗の目標を達成しつつ、マーケティングコストを削減するには、中長期的な視点で計画を立案しなくてはなりません。
店舗マーケティングにおける重要な要素
店舗マーケティングを実施する際は、売上構成要素を考える必要があります。売上構成要素は「売上=来店客数×購買率×平均客単価」で計算できます。
売上・利益向上を目指すには、この3つの要素を知り、企業や店舗に不足している要素を補えるような対策を講じなくてはなりません。
店舗マーケティングにおける、重要な要素とその内容について解説します。計画を立てる際は以下の内容を意識しながら検討しましょう。
来店客数
来店客数は、店舗に訪れた人を指す要素です。どんなに高品質な商品・サービスを提供できる体制を整えても、顧客が来なくては意味がありません。このことから来店客数は、売上を構成する重要な要素であるといえます。
来店客数は新規顧客とリピーターのふたつに分けられます。店舗の状況により、ターゲットにすべき顧客やマーケティングによる課題が異なるため注意しましょう。具体的には、以下のようになります。
- 新店舗:新規顧客獲得が課題
- オープンより数年経った店舗:リピーター獲得
店舗の状況に合わせたターゲット層や課題を絞り込むのも、マーケティング成功のポイントです。
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購買率
購買率は来店顧客のうち、商品やサービスを利用してくれた人の割合を指す要素です。「購買率=購入客数÷来店客数」で計算できます。
購買率は店舗の販売成果を示す指標であり、マーケティング上欠かせない数値でもあります。計算して購買数を算出し、多いまたは少ないかを分析・判断すれば、企業や店舗の課題解決の糸口を見つけられるでしょう。
平均客単価
平均客単価は、ひとりの顧客が1度に購入・注文する際の平均金額を指します。「平均客単価=店舗売上高÷購入客数」で計算できる要素です。
現在の単価を計算すれば、目標売上や利益に到達するために必要な客単価を明確にする効果もあります。
売上向上はこれまで解説した要素を満たせば達成できます。加えて平均客単価にも注目すれば、より売上アップに役立つ施策を打ち出せるようになるでしょう。
店舗マーケティングにおけるポイント
店舗マーケティングにはさまざまな手法や効果的な施策があります。これらの効果を最大限に発揮するには、以下のポイントをおさえたうえで展開しなくてはなりません。
顧客理解を深める
店舗マーケティングを成功させるには、顧客に対する理解を深めなくてはなりません。企業や店舗の課題改善に意識を向けると、企業・店舗目線のまま施策を展開してしまいます。
どんなに優れた施策でも、顧客ニーズからずれた内容では、思ったような成果は出ません。
効果的な施策を打ち出すには、顧客ニーズを知り、顧客が求める企業や店舗の姿を理解する必要があります。
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顧客とのコミュニケーションを大切にする
顧客目線のマーケティングや施策を展開するには、顧客の生の声を聴ける体制も必要です。具体的には、定期的なアンケート調査や、店舗での顧客とのやり取りなどが該当します。
これらの行動を通して、顕在化しているニーズはもちろん、隠れたニーズを探し出す作業も行わなくてはなりません。
通販やデリバリー・ネットスーパーなどが普及した現在、便利さや手軽さ・安さだけではアピール要素にはなりません。実店舗ならではの魅力や、コミュニケーションを取れる体制も必要です。
データ収集・分析・改善に力を入れる
マーケティングの成功は、施策前後の売上や課題となる指標の変化で判断します。施策の前中後で定期的な情報収集を行うのも、マーケティング成功における重要な要素です。
収集する対象となるデータとしては、以下の3つがあげられます。
- POP
- 売上
- 顧客数
これに加え、先ほど解説した顧客データも欠かさず収集しておきましょう。これらのデータを試作の前中後で収集し、売上構成要素をもとに分析することで、施策の成功と失敗を判断できます。
分析すれば、施策の成功や失敗の原因も分かります。成功につながった要素は次の施策に活かし、失敗した要素は改善や改善策に役立てましょう。
情報収集と分析をこまめに実行する習慣をつければ、効率的な施策が打ち出せるようになるはずです。
店舗経営におけるマーケティングの種類
ここでは、実際の店舗運営におけるマーケティングの種類について、代表的なものを7つご紹介します。
デジタルマーケティング
デジタルマーケティングとは、デジタルテクノロジーを利用したマーケティング全般のことを指します。取得できるデータにはWebサイトのアクセス履歴、ユーザー登録情報、各種SNSや情報サイトの口コミ分析などが含まれます。
デジタルマーケティングとWebマーケティングは混同されやすいのですが、より正確に言えば、デジタルマーケティングの中にWebマーケティングが含まれるというイメージです。
デジタルマーケティングがさまざまなデジタルテクノロジー(各種デジタルツール、オンライン商談など)を使ってマーケティングを行うのに対し、WebマーケティングはWebの世界を中心に行うマーケティング(オウンドメディア、SEO対策など)のことを指します。
O2Oマーケティング
Online to Offlineの略で、オンライン(Webサイトなどのデジタルメディア)からオフライン(リアル店舗など)へ誘客すること、またはその逆のことを指します。
O2Oマーケティングの派生形として、テレビを起点とし、スマホなどのデジタル端末からリアル店舗へと誘客するO2O2O(On air to Online to Offline)というマーケティング手法もあります。
O2Oマーケティングでは、SNS広告やメールマガジンでクーポンを発行し、顧客の来店や購買を促す手法が代表的です。チラシやポスター、DMなどの印刷物を作るより低コストで多数のターゲットにアプローチしやすく、デジタルメディアは効果測定もしやすいので、どの施策がより効果的かもわかりやすいというメリットがあります。
似たような用語のOMO(Online Merges Offline)は、オンラインとオフラインの融合を意識したマーケティング手法のことを指します。デジタルデータを起点とする点は同じですが、O2Oほどオンオフをはっきりと分けず、マーケティングに活用していきます。
リレーションシップマーケティング
リレーション(relation)とは「関係」を意味し、「顧客と長期的で良好な関係を築くことで売り上げを増加させるマーケティング手法」のことです。
販売情報を分析して、属性に合わせたマーケティングを行ったり、顧客に登録してもらった情報から、誕生日や来店頻度に合わせてクーポンを配信したりする方法があります。近年ではSNSの普及から、LINEやFacebook、TwitterなどSNSを活用して顧客との関係性を強化する手法も増えています。
リレーションシップマーケティングは、長期的に顧客と良好な関係を構築し、価値あるコンテンツを提供するコンテンツマーケティングと似た考え方に基づくマーケティング手法です。そのため、コンテンツマーケティングと同様に、どうやって顧客との接点を獲得するかが重要です。
DM送付のための住所、メルマガ送信のためのメールアドレスなどはいずれも個人情報にあたるため、登録によって何らかのインセンティブ(お得情報、クーポンなど)を打ち出し、登録を促す必要があります。
バズマーケティング
SNSなどで良く使われる「バズる」という言葉。バズマーケティングとは「(意図的に)話題や口コミを作って拡散させ、認知度を高めるマーケティング手法」のことです。思わず誰かに教えたくなるようなコンテンツを作り、ユーザーの興味を引いて拡散につなげます。
企業や店舗側が意図的に情報を拡散してもらおうとするため、うまく取り組まないと「やらせ感がある」など、否定的に捉えられてしまうこともあります。コンテンツがあまりにもモラルを欠いた内容であった場合、炎上することも考えられるため、単に奇抜さを狙うのではなく、ターゲット以外の層にも配慮したコンテンツ制作を意識しましょう。
エリアマーケティング
地域を区切り、その地域に合ったマーケティングを行う手法です。「子どもが多い地域」「競合店舗の周辺10km」など商圏分析に基づいたエリア区分を使い、地域特性に合ったマーケティング施策を打ち出します。
例えば、一人暮らしの人をターゲットにした店舗なら、店舗の商圏内で一人暮らしのワンルームが多いエリアにポスティングするなどの施策が考えられます。地域分けに使われるのがGIS(地理情報システム)で、店舗位置などの情報を電子地図上に重ねたものです。
GISにスマホの位置情報を組み合わせ、「ある特定の期間に該当店舗へ来店した人のうち、23区内に居住している女性」といった複雑な区分もできます。
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ダイバーシティマーケティング
ダイバーシティ(diversity)とは「多様性」のことで、「価値観や性別、年代などの多様性を受け入れ、それぞれの価値観に合った商品・サービスを提供するマーケティング手法」のことを指します。
この場合の多様性には「日本人、女性、30代」といった目に見える属性だけでなく、「美意識・健康志向が高い」「ヘルシー志向」のような属性も含まれます。マス向けのメッセージではなく、属性・価値観に合致したメッセージを発信することで、ターゲット層から共感を得やすいマーケティング手法です。
バイラルマーケティング
バイラル(viral)とは、ウイルスを表す英語の形容詞形で「ウイルス性の」という意味の言葉です。ウイルスは伝播が早いことから、インターネット上の口コミなどを使って情報を素早く、かつ広く拡散させるマーケティング手法のことを指します。
商品・サービス購入にあたって口コミサイトを利用する人、SNS投稿の評価を情報源とする人は多いため、好意的な口コミを広めることは効果的と考えられます。
ただし一方で、企業の意図が透けて見える口コミや、「依頼主から金銭などを受け取ったうえで、広告と隠して発信する口コミ(ステルスマーケティング、ステマ)」に嫌悪感がある人も多いため、バイラルマーケティングを行う際には十分に注意が必要です。
店舗の状況に合わせた効果的なマーケティングを取ろう
モノが売れないとされる現代、企業が売りたいものをプロモーションするだけでは売れません。顧客のニーズを汲み、顧客にとってより良い価値を提供することで、顧客との関係性を長期的に築くマーケティング戦略が重要です。
今回ご紹介したマーケティング手法を参考に、ぜひ店舗経営にマーケティング戦略を取り入れてみてはいかがでしょうか。