差益率とは?仕組みや内容を理解して経営戦略に活用しよう
店舗の経営を分析するときには、さまざまな指標を活用します。そのひとつが、差益率です。差益率を正しく分析し、経営戦略に活かすには数値の意味や内容について知っておく必要があります。
今回は、差益率の意味やほかの指標との違いなどの基本的な知識を解説しつつ、経営戦略に活用するヒントをご紹介します。
目 次
差益率とは
差益率とは、売上高に対して粗利である収益高が占める割合を指す用語です。粗利率・売上総利益率とほぼ同じ意味でもあります。ちなみに粗利とは、粗利利益の略語で売上高から仕入高を差し引いたときに算出される利益です。
差益率は、以下の計算式で求められます。
差益率=差益高÷売上高×100
差益率は、ある商品を販売したときどれだけ利益を生み出しているかをチェックする、重要な指標です。マーケティングや商品分析を行う際によく活用します。
粗利率との違い
差益率とよく似ている言葉に、粗利率があります。これは、売上に対して売上総利益が占める割合のことです。売上総利益率・粗利益率と呼ばれるもので、差益率とほぼ同じ意味を指します。
粗利率を求める際の計算式は、以下のとおりです。
粗利率=(売上高-売上原価)÷売上高×100
計算式でも、差益率とほぼ同じ内容を計算していることが分かります。資料で粗利率の記載があったときは、差益率とほぼ同じものとして判断しましょう。
利益率との違い
差益率と粗利率に似ている用語に利益率がありますが、これは売上高に対する利益割合を指す言葉です。差益率や粗利率は、利益率のひとつに当たります。
たとえば、売上が100万円で、そのうちの利益が20万円だったとします。この場合、利益率は20%です。利益率の記載があったときは、何を指しているのかをよく理解したうえで読み解きましょう。
差益率から分かること
差益率の数値は、企業や店舗が置かれている状況を判断するのに役立ちます。差益率の高低を知っておけば、自社がどのような状況なのかを判断できるようになります。差益率の数値が示す内容を覚えておきましょう。
差益率が高いとき
差益率が高いときは、販売している商品やサービスの付加価値が高く評価されている状態です。効率よく利益を出していると判断できます。
なお、差益率の平均や高低は業種・商品やサービスごとに異なります。複数の商品やサービスを扱っている場合、商品・サービスがすべて評価されているわけではありません。利益率の高いものがよく購入されていると判断します。
スーパーマーケットも例外ではないため、ご注意ください。
差益率が低いとき
差益率が低いときは、商品やサービスの付加価値が低いと評価されています。販売しても顧客に購入してもらえていない状況のため、改善が必要です。
スーパーマーケットのように、商品やサービスごとに利益率が異なる業種の場合は、高付加価値商品やサービスの売れ行きが悪いと判断します。
差益率を分析する際の注意点
差益率は数値の高低で商品やサービスの売れ行きを判断できる数値ですが、数値以外にもチェックすべき点があります。差益率を分析する際は、以下の注意点も意識しながら分析しましょう。
差益率は業種ごとに平均値が異なります。目安はあっても複数のデータと比較したうえで判断しましょう。判断の際は、以下のデータも参考にしてください。
- 競合他社の差益率
- 業界全体の平均差益率
- 過去の自社差益率
差益率の目安としては、最低でも20%はキープしておくべきであるといわれています。あわせて業界ごとの平均値も把握しておきましょう。スーパーマーケットを含めた小売店は、令和2年度では約30%です。
業界ごとの平均値は年度により変動します。比較の際は最新かつ正確なデータを仕入れてから取りかかりましょう。
差益率が高ければ高いほどよいとは限らない
差益率は、高ければ高いほど事業が好調であるように見えますが、経営の視点から見るとそうはいかないこともあります。売上の足を引っ張る要素がないかもあわせてチェックしましょう。
差益率が高くても、販売費や商品の管理費がかかっているとそちらに利益が吸い取られてしまいます。経費に足を引っ張られている状態のままだと、売上が減少したときの損失が大きくなります。
差益率が高いからと安心せず、より利益を高めるためにできることはないか、考えながら分析しましょう。
差益率を上げる方法
より利益を上げるには、商品やサービスの差益率を上げる施策が有効です。差益率を高めるには、より高く商品やサービスを売るだけでなく、経費や施策の見直しも行わなくてはなりません。
差益率を上げたい場合に有効な方法を解説します。
商品やサービスを見直す
差益率は、商品やサービスの付加価値に左右される指標です。向上させるには対象となるものの価値を見直しましょう。たとえば、自社PB商品の差益率を向上させたい場合は、商品の分析が有効です。
- 競合にはない魅力や価値がPBに備わっているか
- 顧客が手に取りたくなるような商品の特徴
- 自社の強みを活かしたブランディング施策
これらの要素を分析し、必要に応じて改善すれば、PBの差益率を向上できるはずです。
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売上原価を見直す
差益率は売り上げのうち粗利が占める率を指す指標のため、売上原価にも左右されます。商品の仕入値が高ければ高いほど差益率も下がります。
商品やサービスの付加価値だけでなく、仕入値や材料費・加工費などが適正な範囲であるかもチェックしましょう。
特にチェックすべきなのが、経費の中でも高額になりがちな人件費です。人件費の問題は、スーパーマーケットも例外ではありません。
売上を構成する指標を分析したときに、人件費が利益の足を引っ張っている場合、費用の見直しや別方向からのアプローチも検討した方がいいでしょう。
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販売施策を見直す
差益率が低い場合、商品やサービスの施策・マーケティングがうまくいっていないのかもしれません。これまで解説した対策が必要ない場合や、行ってもあまり効果を得られない場合は、施策や販売戦略を見直しましょう。
具体的な方法としては、利益率の高い商品を洗い出しつつ商品を購入してもらえるよう研究・実践するのが主なやり方です。まずは何が差益率を下げているのか、分析するところから取りかかりましょう。
また、施策やマーケティングを定期的にチェックするのも重要です。成功している場合はよい部分を、うまくいかないときは改善策をそれぞれ分析し次回施策に活かせば、より効率的に差益率を高められるでしょう。
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差益率を正しく理解して経営に活かそう
差益率は、商品やサービスの付加価値を判断する重要な指標です。定期的に分析することで、企業や店舗がより多く利益を得られる環境を整えるのにつながります。
差益率は利益率のひとつであり、これひとつだけでは正確な分析はできません。分析上の注意点をおさえつつ、さまざまな指標と見比べながら判断しましょう。
自社経営を有利に進めるためにも、分析の際はより正確に分析するためのポイントをおさえながら実施してください。