プライシングとは?利益を得るための価格戦略
プライシングは売上や利益を得るうえで重要な要素です。マーケティングを成功させるには、価格設定にも注目しながら戦略を展開する必要があります。そのためには、プライシングに関する基礎的な知識を身につけておかなくてはなりません。
本記事は、プライシングとはそもそもどういう意味なのかといった基礎的な内容から、具体的な戦略とその効果について解説しています。商品の価格設定やマーケティングにお役立てください。
目 次
プライシングとは
プライシングとは、以下のプロセス全般を指す用語です。
- 商品やサービスの価値を見極める
- 価値を価格に転嫁して販売する
- 商品やサービスを購入してもらうことで狙った利益に転換する
プライシングは利益最大化を目的に行われます。利益を最大化するために商品価値を定量化し、競争環境やコスト構造なども勘案して価格を見出します。
【関連記事】
慣習価格とは?用語の意味やそのほかの価格用語、価格設定戦略も解説
価格とプライシングの違いとポイント
そもそも、価格とはどういうものなのでしょうか。価格とは商品やサービスの価値を得るために消費者、つまり顧客が負担する金銭です。プライシング業務のプロセスでは、パラメーターのひとつでもあります。
一方、プライシングは商品やサービスの価値を価格に転嫁・販売して狙った利益を出す業務プロセスを出します。商品の価値は常に一定とは限りません。商品やサービスの価値は、以下の要素により変動します。
- 機能
- ブランドやその歴史
- 競争環境
これらの要素を見極めて適切な価値を付け、利益につなげられるようにするのが、プライシング最大のポイントです。価格はプライシングにおいて重要な要素を占めてはいますが、プライシングそのものではありません。
プライシングの目的とは
プライシングは商品やサービスを販売するうえで重要な業務です。業務を適切に行うには、プライシングの目的を深く理解しておく必要があります。次はプライシングの目的をより具体的に解説します。
売上や利益を高める
プライシングの主な目的は売上や利益の向上で、売上は販売価格×販売数で求められます。プライシングは、この販売価格を直接的に決める重要な要素です。
また、販売数を最大化するには、顧客にとって適切なプライシングを行わなくてはなりません。プライシングは売上や利益を得るにあたり、根本的な部分に深く関係する要素であるといえます。
【関連記事】
スーパーの利益を上げるには?利益を上げるための考え方と具体的手法
商品やサービスの価格を安定させる
プライシングの目的は、商品やサービスの価格を安定させることも含まれます。商品やサービスの価格が常に大きく変動していると、顧客は購入タイミングが分かりません。
これは商品やサービス、ひいてはそれを製造販売する企業に対する不信感にもつながります。適切なプライシングによる価格安定は、顧客が安心して商品やサービスを購入・利用するために欠かせない要素です。
市場シェアを維持・拡大するため
プライシングの目的には、市場シェアの維持と拡大も含まれます。市場シェアの維持や拡大が見込めれば、商品の大量生産によるコスト削減効果などが見込めます。コストの削減は利益控除において重要な要素です。
市場シェアを維持・拡大するには、競合他社の価格変動をしっかり把握しておく必要があります。市場シェア把握のための調査も、プライシングにおける重要な要素です。
プライシングの基本的な考え方
プライシングの手法を選択・実施する際は、以下3つの基本的な考え方を用います。手法とあわせておさえておきましょう。
コストを基に考える
プライシングの考え方のうち、コストを基にして考える方法があります。小売業では、仕入れ原価に一定の利益率を足して価格を算出するマークアップ法が該当します。売れば一定の利益率が確実に見込めるのがメリットです。
しかし、顧客にとっては必ずしも最適価格とはならないため、利用する際は注意しましょう。
需要を基に考える
需要もプライシングを考えるときの柱になる要素です。市場調査やアンケートなどを基に、提供する商品やサービスの適切価格を決定します。原材料の調達などの際は、需要を基に決めた価格で利益を確保できるよう検討します。
顧客にとって適切な価格を設定できる反面、調達コストなどによっては十分な利益を見込めない可能性がある方法でもあります。
競合他社を基に考える
競合他社の価格もプライシングを考える際の元となります。昨日やスペックが同程度の製品を販売する場合、競合他社と同じまたは少し安くして販売することで、売上や市場シェア拡大が期待できます。
市場に合わせた価格設定ができますが、競合他社の基準によっては自社利益が十分に出ない恐れがあるため、注意しましょう。
プライシングの手法
企業や店舗において重要な手法であるプライシングは、どのように行えばいいのでしょうか。次は、プライシングの手法について解説します。
コストプライシング
コストプライシング、またはコストアプローチは対象の商品やサービスの原価をはじき出し、一定額の利益を乗せて価格決定する手法です。
日用品やお菓子などの嗜好品・ガソリンなどの原価が明瞭活販売数量をある程度予測できるものを販売する際に用いられます。コストプライシングはこのほかのプライシング手法とも組み合わせて活用されることもあります。
また、スーパーマーケットでもよく採用されている手法です。
ニーズ志向プライシング
ニーズ志向プライシングは、特定の市場ニーズに合わせて最適な価格設定をする手法です。たとえば、繁閑差で予約状況が大きく変動するホテルや航空券などの価格設定でよく活用されています。
このうち、繁閑差に合わせて価格を動的に変動させる方法を、ダイナミックプライシングと呼びます。
競合ベースプライシング
競合ベースプライシングは、競合他社の価格設定を参考にして対象の価格を決定する方法です。自動車や携帯電話の通信キャリア・ビールなどの寡占市場が形成されている場所でよく採用されています。
競合ベースプライシングの場合、市場において大きなシェアを持ち、価格設定に最も大きな影響をもたらす「プライスリーダー」が存在します。
競合ベースプライシングを採用している商品やサービスは、このプライスリーダーに合わせて価格が上下するため、その動きを入念に読んでおくことが重要です。
バリューベースプライシング
消費者ニーズやその感覚に重点を置いて価格を設定する方法です。競合製品やサービスと差別化されている価格に対して、消費者がいくらまでなら払っていいと思っているかを調査し、価格に上乗せします。
消費者の希望または意識上の価格を見極める際には、市場調査や顧客への聞き取りを行います。ほかの手法とは異なり、単純な比較がしにくいため、難易度の高いプライシングです。
うまく活用できるようになれば、価格上昇に合わせて顧客ニーズに合わせた価格を提示できます。利益が上がれば新しい商品やサービスの開発または改良により、新たな価値を付与することも可能です。
難しいですが、成功すればより大きな利益を上げられる手法であるといえます。
スキミングプライシング
製品やサービスを市場に導入してすぐは高めの価格で販売し、普及するにつれて徐々に下げる方法です。上澄み価格戦略とも呼ばれ、価格が多少高くても新製品が欲しいと考える顧客層をターゲットにする際取られます。
新商品を求める顧客層が一定数いる、IT機器などでよく取られている手法です。
ペネトレーションプライシング
ペネトレーションプライシングは、市場シェアを確保するためになるべく安い価格で商品やサービスを提供する手法です。
商品やサービスの価格を大幅に抑えることで、競合他社の追随を断念させつつ、早期に市場に浸透させることを目的として行います。これにより、販売数が上がり単価を顕著に下げる効果を期待して行う手法です。
競合他社をおさえて市場を拡大できますが、初期コストがかかります。想定通りにシェアを取れない場合、採算割れする恐れがあります。そのため、大企業のようにある程度余裕のある企業が取ることが多い手法です。
高価格戦略
付加価値の高い製品やサービスを高価格で販売して利益を上げる手法です。主に、以下のようなメリットがあります。
- 無理な値下げや値引きを行わないことで利益を確保できる
- 高くても高品質な製品・サービスを提供しているブランドイメージを創出できる
製品やサービス自体の付加価値を高く設定できます。また、アフターサービスや顧客とのコミュニケーションを徹底することで、高価格帯でも買ってもらえるようになる戦略です。
成功するには、一定のブランド力や他社が模倣するのが困難な技術などが求められるため、注意しましょう。
プライシングを成功させるためのポイント
プライシングはただ行えばいいものではなく、ポイントをおさえる必要があります。プライシング成功に必要なポイントを解説します。
複数の要素を総合的に考える
プライシングは企業が利益を得られる価格を設定することが大切ですが、一方で顧客心理や競合他社の動向も踏まえなくてはなりません。
自社利益だけ追及すると顧客の心理が満たせず、顧客のことだけを考えていると他社に追い抜かれる状態に陥りやすくなります。プライシングは、複数の要素を満たせるようバランスを意識しましょう。
常に変動する条件に合わせるためには、ときには見直しも必要です。
データを活用する
プライシングの精度を向上させるには、必要なデータを普段から蓄積・確認して活用することが大切です。具体例としては、以下のデータがあります。
- 原価
- 販売データ
- 顧客データ
データを日常的に集めてモニタリングすることで、プライシングすべきタイミングを早期発見・実施できるようになります。普段から必要なデータを蓄積し、必要に応じて活用できるようにしておきましょう。
プライシングを正しく理解して売上利益向上を目指そう
プライシングは、売上や利益を得るうえで重要な要素です。自社が取り扱う商品やサービスをよく理解し、適切な手法を用いて行わなくてはなりません。
そのためには、プライシング手法はもちろん、同業他社や市場の状況を理解することも大切です。プライシングを行う際は、必要な要素をそれぞれ正しく理解したうえで、自社が利益を得られるような戦略を取りましょう。
なお、プライシングは売上や利益を得るうえで重要な要素ですが、戦略のすべてではありません。自社設備を充実させることも、売上や利益を得るのに有効な手段です。
きゃらくるカートは、小さい子どもとその保護者が買い物しやすい環境を整える効果があり、集客やそれによる売上・利益向上効果があります。
プライシングと並行して集客施策や戦略を検討する際は、ぜひきゃらくるカートをご利用ください。