チェーンオペレーションとは?メリットを解説
チェーン店という多店舗展開の方法を知っていても、チェーンオペレーションとはどんなもので、どんな形態があるのかについて、詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、チェーンオペレーションの概念とよくある3種類の形態紹介に加え、チェーンオペレーションを運営する上で大切なポイントについて解説します。
目 次
チェーンオペレーションとは
チェーンオペレーションとは、本店を軸として支店(チェーン店)を展開していく多店舗管理手法の一つで、チェーン本部とチェーン支部で業務内容、担当業務を変えるのが大きな特徴です。小売業などでよく見られる本手法は、仕組み全体を指して「チェーンオペレーション・システム」と呼ばれることもあります。
チェーン本部の役割
チェーンオペレーションにおいては、本部と支部で役割が異なります。本部は、仕入れや経営の統制など全体的な戦略行動を、支部は販売や営業といった戦略に基づいた戦術を担当するというように分担します。
本部の役割は、販売戦略や経営方針をしっかり決めて、それらをトップダウン方式で各店舗に展開することです。これは、チェーン全体として一貫性を持った戦略行動を行うことで経営効率化を狙うものです。
チェーン店舗の役割
一方、チェーン店舗の役割は、店舗での販売や営業活動に全力を注ぐことです。チェーンオペレーションでは、チェーン本部が戦略立案を行ってくれますから、チェーン店舗は戦略立案や仕入れ等に煩わされることなく、目の前の仕事に集中できます。
チェーンオペレーションで得られるメリット
チェーンオペレーションで得られるメリットには、以下のことがあります。
- 本部と支部の役割が明確になり、それぞれの業務に専念しやすい
- 店舗開設など、各種費用が削減できる
- 安定して高品質なサービスが提供できる
チェーンオペレーションでは本部と支部の役割が明確に区分され、それぞれの業務に専念しやすくなります。また、店舗開設に伴う設備などの購入、従業員の採用などをチェーン本部に集中することで、規模の経済性によって仕入れにかかる費用や固定費、採用コストなどを削減できます。さらに、チェーン本部でサービス提供手順をマニュアル化して配布するため、チェーン全体で質の高いサービスを提供できます。
チェーンオペレーションの3形態
次に、チェーンオペレーションの3形態を解説します。
レギュラーチェーン
レギュラーチェーンは、企業が自ら出資・経営する直営店をそれぞれの地域に出店する形態で、スーパーや専門店でよく見られます。戦略立案や仕入れなどの業務がチェーン本部で一括管理されるため、規模の経済性によってコスト削減ができるほか、本社が持つノウハウ共有による経営効率化も実現できます。
フランチャイズチェーン
フランチャイズチェーンは、商品や営業などのノウハウを保有する企業(フランチャイザー)が独占販売の権利を持つ加盟店(フランチャイジー)を募集するという形態です。本形態は、コンビニや飲食店でよく見られます。レギュラーチェーンとの違いには、例えば以下のようなものがあります。
- フランチャイズ加盟店の開業費は各オーナーが支払う(本部と支部は資本的に無関係)
- チェーン本部は、加盟店に対して商品の販売権の貸与や経営の指導を行う
- 加盟店は、チェーン本部と契約を結び、契約料やロイヤリティを支払う
チェーン本部と各加盟店は資本的には独立関係にあるため、本部は多額の資本を投下しなくても短期間で市場を拡大できます。また、加盟店は有名企業のブランドを利用できるため、展開当初からある程度の収益を見込めるでしょう。さらに、加盟店は本部から経営面でのノウハウを学べる点もメリットです。
ボランタリーチェーン
ボランタリーチェーンは、同じ目的や志を持った加盟店が集まり一つのグループを作るチェーン方式です。同チェーンにも本部が存在しますが、その本部をグループ加盟店自らで設立するという点で、その他のチェーン方式とその性質が異なります。
それぞれの加盟店は資本的に独立していますが、グループ間の互助を目的としてお互いに支え合います。また、本部からの統制がその他チェーン方式に比べて緩いことから、店舗の独自性も出しやすいというメリットがあります。アパレル店や飲食店などで見られる形態です。
チェーンオペレーション運営の3原則
多店舗経営の一手法であるチェーンオペレーションを成功させるためには、守るべき3つの原則があるとされています。これら3原則は、英語の頭文字をとって3Sと呼ばれることもあります。
標準化(Standardization)
チェーンオペレーションにおける「標準化」とは「画一化」や「統一化」とも呼ばれ、店舗間の違いを可能な限りなくすことを指します。どの店舗でも同質のサービスを提供できる体制を整えることで、顧客の中にチェーン全体への信頼感を醸成できます。
単純化(Simplification)
チェーンオペレーションにおける「単純化」とは、複雑な作業内容をできる限り簡潔にして、「誰でも」「無理なく」「一度で」作業内容を理解できるようにすることです。誰でも無駄のない同質の作業ができるようにすることで、作業時間の短縮や従業員の教育コスト削減が実現できます。
専門化(Specialization)
チェーンオペレーションにおける「専門化」とは、商品・サービスに関する知識を高め、消費者の目的に応じた提案ができるようにすることです。従業員それぞれが商品・サービスに関する知識を深めることで、顧客からの信頼を獲得しやすくなります。
以上のように、チェーンオペレーションを成功させるためには、チェーン全体でのサービスの標準化(Standardization)、作業の単純化(Simplification)、そして知識の専門化(Specialization)という3Sを意識する必要があるとされています。
チェーンオペレーションの課題と対応策
チェーンオペレーションは便利な多店舗経営手法ですが、その導入と運営にあたっては、注意が必要な部分もあります。以下のような点が挙げられます。
スーパーバイザーが必要
チェーンオペレーションを成功させるには、店舗運営のルールが守られているかしっかり監督する組織体制、人材が必要です。店舗数が増えるほどその管理は難しくなりますが、管理が行き届かなければ店舗ごとのサービス水準を保つことが難しくなってしまいます。
「標準化」はチェーンオペレーション成功の大原則の一つのため、この状況は望ましいとは言えません。従って、チェーンオペレーションを成功させるためには、広くチェーン店舗の状況を見極め、必要に応じて柔軟に対応を変化させる力を持った、実行力のあるスーパーバイザーが必要なのです。
管理や統制の進み過ぎによるモチベーション低下
チェーンオペレーションにおいては、本部による各店舗管理や統制が必要です。しかし、管理が強くなりすぎると店舗が自由に動けなくなるとともに店舗側のモチベーション低下が起こり、業務効率が著しく低下する恐れもあります。
チェーンオペレーションは目的ではなく手段であるため、これでは本末転倒です。管理の原則は守りつつも、時には店舗が臨機応変に動ける裁量を付与する、店舗から本部への提案が可能な仕組みを作るなど、店舗側もチームの一員だと感じられる風土作りを心掛けることも重要です。
業務過多に陥る恐れ
各店舗に画一化を求めるチェーンオペレーションでは、地域性などに起因する個別具体の消費者嗜好に対応しにくい側面があります。各店舗が地域性に対応するために独自施策を行う場合、当該店舗は本部からの指示業務を含めて多くの業務を抱えることになります。
業務量過多に陥ってしまうと、チェーンオペレーションが本来持っている強みも損なわれかねません。この問題を避けるためには、本部側は各店舗への指示を適切な量にとどめること、店舗側では独自施策の実行を検討する場合、その必要性を慎重に見極めることが大切になります。
以上のように、便利なチェーンオペレーションも決して万能の手法ではないのです。3Sの強みを生かしたチェーンオペレーションを成功させるためには、必要となる体制や人材を準備したうえで、状況を適切に見極めて臨機応変に対応していく必要があると言えるでしょう。
まとめ
チェーンオペレーションとは、本店を軸として支店を展開していく多店舗展開の手法の一つです。本手法では、経営や管理をチェーン本部に、販売や営業をチェーン店舗にというように、それぞれの担当業務が分けられます。本手法を効果的に運用できれば、チェーン全体の経営効率化を実現できるでしょう。