私たちの暮らしに欠かせない施設として真っ先に名前が挙がるものの一つが、スーパーマーケットでしょう。私たちが健康的な生活を送るうえで、スーパーマーケットはなくてはならないものです。しかし、そのスーパー業界には人手不足という問題があると言われています。

コロナの緊急事態宣言も明け、人の動きも殆ど従来の在り方に戻りつつあるため、今後も人手不足の傾向は続くでしょう。この記事では、スーパーマーケットの人手不足の原因とその改善方法についてまとめていきます。

スーパー業界の概要

スーパー業界は小売業に分類され、青果・鮮魚・精肉などの食品、日用品を主に販売する「スーパーマーケット」のほか、食料品から日用品や衣類、雑貨まで取り扱う「GMS」、小型のスーパーマーケットである「ミニスーパー」などがあります。

ほかにも、業務用食品を取り扱う「業務用スーパー」、低価格の商品を取り扱う「ディスカウントストア」、消費者の自宅まで商品を届ける「宅配スーパー」などもスーパーマーケットに含まれます。

スーパーの人手不足の原因

スーパーマーケットが人手不足に陥りがちな原因はさまざまですが、ここでは特によく見られる6つの原因を解説します。

スタッフの雇用形態によるもの

スーパーマーケットで働く人にはパートやアルバイトの雇用形態で働く人も多く、もともと長期間働くことを考えていない人も少なくありません。このケースでは例えば、家事を預かる方が隙間時間に働く、学生の方が学業の合間に働く、などが考えられます。

店舗側としては、教育コストなどを考えて長期間働いてくれる人材を雇いたいと考えることも多いです。しかし、そもそも人手不足であることから、短期間でもいいから働ける人を雇わざるを得ないという現実もあるでしょう。

給与によるもの

スーパーマーケットの仕事の多くは、休憩時間以外ほとんど立ちっぱなしのため、肉体的な疲労がたまりやすいです。また、クレーム対応などで精神的に疲労することもあります。

ただ一方で、スーパーマーケットでの仕事は大変であるにも関わらず給与はさほど高くなく、雇用形態によっては最低賃金に近いほどに低いこともあります。そのため、給与が割に合わないと感じて辞めてしまう人が多いのです。

人間関係によるもの

人間関係の問題はどの職場でも多かれ少なかれ存在するものです。ただ、スーパーマーケットでは限られた空間内で皆が一緒に働くため、特に人間関係が濃密になりやすいです。しかも、チームで作業を行うことも多いため、人間関係に馴染めなかったり、途中で上手く行かなくなってしまうと、仕事自体をやりづらくなり、離職に繋がってしまうことが多いと考えられます。

さらに、連鎖的に辞めてしまう人が出るケースもあります。親密だった人が辞めた場合、改めて職場での人間関係を構築しなければならないことがあり、これを大変だと感じる人もいるからです。

労働負荷によるもの

スーパーマーケットなどの小売業は、早朝から夜間まで年中無休で営業している店舗が多いです。その中には、24時間営業の店舗も存在します。そのため、スーパーマーケットでの労働は早朝・深夜シフトでの勤務など、非常に負荷が高くなってしまうこともあります。

さらに、スーパーマーケットで働く人の多くはパートやアルバイトであり、早朝や深夜に入れる人は少ないため人手不足になりやすいということもあります。また、入れる人が少ないと一部の人に負荷が集中してしまうことになり、さらに勤務したいと思う人が少なくなることで、より深刻な人手不足に陥るという悪循環に陥りがちです。

休暇取得難度によるもの

スーパーマーケットにとって土日はかき入れどきとなり、多くの人員を配置しなくてはなりません。そのため、スーパーマーケットに勤めていると、土日の休みを毎週確保するのは難しいです。そのため、友人や家族と休みが合わず、勤め続けたいと思えなくなってしまう場合もあります。

また、同様に大型連休などもかき入れどきであるため、ゴールデンウィークや年末年始、お盆休みなどに休みを取るのが難しいです。そもそも、シフト制勤務のためにまとまった休暇を取ることも難しいこともあります。こうした理由から、勤め続けたいと思う人が減ってしまう傾向にあるのです。

家庭の事情によるもの

スーパーマーケットでのパートタイマーやアルバイトは、メインで生活費を稼いでいる扶養者に養われている形の「被扶養者」であることが多いです。この場合、収入が多すぎると所得税が発生したり、扶養を外れなくてはならなくなるため、収入を抑えながら働くことになります。

例えば、給与収入が103万円以下の場合は所得税がかかりません。このため、多くのパートタイマーやアルバイトはこの103万円を上限として勤務することが多いです。さらに、収入が130万円を超えると扶養から外れなくてはならず、健康保険料と厚生年金保険料を自ら支払う必要があります。

このようなことから、主夫（主婦）や学生で130万円を超えて働く人は非常に少ないのです。この結果、従業員一人当たりが供給できる労働量が減少し、人手不足に陥りやすくなります。

スーパーの人手不足への対策

ここまで述べてきたように、スーパーの人手不足にはさまざまな原因があります。それを解消するための対策として、例えば以下のような3つの方法が挙げられます。

労働環境を改善する

労働環境の改善は、人手不足対策として最も有効な打ち手の一つです。具体的には、現在の業務に無駄な作業が発生していないかの確認、業務標準化による業務効率アップを目指すことなどが重要です。加えて、シフト管理を見直したり、年次有給休暇を導入したりして、より柔軟に休みやすいシフトを組めるようにすることも重要となります。

また、スーパーマーケットにありがちな「とりあえず先輩の仕事を見ながら覚える」という教育方法が、非効率を招く場合もあります。書類で学べるものは書類で学び、必要な部分だけOJTを活用するようにすれば、教育コストを低減させ労働環境の改善へとつなげられるでしょう。

さらに、良好な人間関係が労働環境を改善することに繋がることは言うまでもありません。人間関係を円滑にする方法として、店長がスタッフの話を聞く場を設けたり、SNSやチャットツールなどを使ったりしてスタッフ間のコミュニケーション活性化をはかることも検討しましょう。

働き手を増やす

そもそもの働き手を増やす、つまり雇用を広げることも重要です。そのために、店舗独自の魅力を発信して競合他社と差別化したり、ブランディングを行ったり、適切な求人媒体を使ったりして、求職者の目に留まるような採用活動を行う必要があります。

例えば、「休みがとりやすい職場」は大きなアピールポイントになりえます。ほかにも、採りたい世代によって求人媒体を分けるのもよいでしょう。近年では若年層を中心にインターネットを使った採用・求職活動が盛んなため、若年層を採用したい場合はインターネットを活用しましょう。

また、雇用を広げる一つの方法として、シニア層や外国人雇用なども有効です。特に高齢化に伴い、まだまだ現役で働きたいと思うシニア層は多いです。外国の方でも、働きたいという意欲的な人は少なくありません。実際に小売業で働く外国人労働者も既に多いため、言語や文化などの問題をマニュアル化などで解消できれば、非常に有力な戦力となってくれるはずです。

機械化、システム化を行う

機械化やシステム化で、省人化や効率化を進めるのも一つの手段です。例えば、セルフレジを導入すれば、レジ業務に必要な人員を大幅に削減することができます。ただし、その導入には初期費用やランニングコストなどがかかるため、人件費とセルフレジ導入費用のどちらが費用対効果に優れているか考える必要があるでしょう。

シフト管理システムを導入して、シフト管理の負担を減らすことも重要です。シフト管理ツールを使えば、業務や曜日ごとに必要なスタッフの人数を割り出して設定できたり、従業員のスキルレベルに応じた適切な配置が行えたりします。これにより、手作業でシフトを作成するのと比べて作業負荷が大きく減らせるでしょう。

まとめ

スーパーマーケットが属する小売業界では、人手不足の傾向が非常に高いです。その理由は今回挙げたように、長時間労働や休みの取りづらさ、人間関係、パートタイマーやアルバイトの多さなどさまざまです。小売業での人手不足を解消するためには、労働環境を改善したり、働き手を増やす工夫をしたり、機械化やシステム化を行ったりするなどの方法があります。従業員の働きやすい環境やシステムを整え、人手不足の解消を目指しましょう。