粗利ミックスとは?トータルで利益を確保する販売戦略について知ろう
流通業では商品ごとに原価率が異なるため、それぞれを無計画に売っていては安定した利益が出ません。そこで、トータルで一定の利益を確保するため、商品カテゴリー等の一定のグループでの利益率をとりまとめ、トータルの利益コントロールを行う販売戦略として粗利ミックス(相乗積管理)があります。この手法は、マージンミックスとも呼ばれています。
本記事では、粗利ミックスの意味やメリット・デメリット、事例や活かし方についてご紹介します。
目 次
粗利ミックスとは
利益率の高い商品と低い商品を販売する場合に、トータルでの利益を確保しようとする考え方のことです。例えば、低利益でも顧客誘引力のある「目玉商品」を上手く使い、高利益でも購入ハードルが高めの「利益商品」の購入率を上げて、トータルで利益を確保するといった方法があります。商品ミックスと呼ばれることもあります。
粗利ミックスの考え方を生み出したのは、スーパーマーケットの生みの親でもあるマイケル・カレンです。それまで商品の粗利益率はどの商品も同じ率で設定されていましたが、粗利ミックスの考え方により、商品によって粗利益率を変えることで結果的に全体の粗利益率を最大化できるようになりました。粗利ミックスは主に予算組みなどの場面で使われることが多いです。
粗利とは
粗利とは「売上高−(仕入れ原価+製造原価)」で表され、会計用語では売上総利益とも呼ばれます。粗利はそのまま企業価値や商品・サービスの競争力を表す指標にもなりうるため、ビジネスの現場において最も重要な利益と考えられています。広告宣伝費、人件費、光熱費などの販売管理費はすべて粗利から差し引かれます。
さらに、粗利から販売管理費を差し引いた利益を営業利益と呼びます。営業利益は「企業が本業で稼いだ利益」であり、企業の収益力を示す指標になり得るため、営業利益も重視されています。
営業利益を上げるには粗利を上げるか販売管理費を減らすかが主な手法ですが、販売管理費は人件費や光熱費など下げられないものが多いため、粗利を上げて営業利益を伸ばす販売戦略が取られることが多いです。粗利を上げるためには、単純に売り上げを上げる方法と粗利益率を伸ばす方法の2つがあります。
- 売り上げを上げる…例えば、粗利が低い商品を薄利多売する
- 粗利益率を伸ばす…例えば、仕入れ原価や製造原価を下げる
これらはどちらかの戦略に偏るわけではなく、両者を組み合わせて使われることが多いです。粗利ミックスでは、この粗利益率の考え方がポイントです。粗利ミックスでよく使われる、粗利益率を用いた相乗積の計算方法について、次章で詳しくご紹介します。
相乗積とは
粗利ミックスを用いるうえで重要になるのが相乗積です。相乗積とは、特定グループの商品が利益創出にどれだけ貢献しているかを可視化する指標を言います。相乗積は、以下の計算式で算出されます。
■相乗積=商品の売り上げ構成比 × 商品の粗利益率
それぞれのグループごとに相乗積を算出し、現状を可視化してどこを改善するかを決めます。相乗積が低ければ利益への貢献度が低く、相乗積が高いほど利益への貢献度も高いと言えます。
相乗積をコントロールするためには、売り上げ構成比か粗利率を動かせばよいと考えられます。グループによって粗利率を下げて売り上げ構成比を上げたり、粗利率を高めて売り上げ構成比を控えめにしたりすることで、粗利益額が最大化できる割合を探るのが粗利ミックスの基本的な考え方です。
粗利ミックスを活用するメリット・デメリット
では、粗利ミックスを実際に活用した場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。粗利ミックスのメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
粗利ミックスのメリット
売上至上主義の思考から抜け出し、利益最適化を意識できるようになります。特に営業や販売の現場では、どうしても成果を出すために売上ばかりを追うという考え方に陥りやすいです。
実際に、業績評価に売上実績を指標としているケースは多いですが、粗利ミックスの考え方を使うと、凝り固まった現場の思考パターンに一石を投じられます。ただし、粗利ミックスは考え方を根底から覆すことも多いため、浸透させるためには時間がかかる場合もあるでしょう。
また、粗利ミックスのもう一つのメリットとして、商品群ごとの売上貢献度が分かるため利益向上のための施策が検討しやすくなる、というものがあります。とはいえ、売り上げ貢献度が低い商品を単純に上げればよいという話ではなく、売り上げ貢献度が低い場合は「目玉商品」なのかどうかを見極めたり、売り上げ貢献度が高いグループの売り上げ目標を高めに設定したり、という工夫が重要です。
粗利ミックスのデメリット
相乗積の高い商品=利益創出の面で最重要の商品とは限りません。相乗積だけを見ていると、近視眼的になってしまうリスクがあるので注意が必要です。上げるべきは粗利益率ではなく、トータルの粗利益額であることは常に意識しておかなくてはなりません。
市場競争戦略は、複合的な要素を考慮して決定する必要があります。競合他社との力関係や市場環境によっては、知名度やシェアを伸ばすために粗利益率を下げても販売を拡大するなどの「損して得取れ」が必要になることもあるでしょう。粗利ミックスは予算組みなどに便利な考え方ですが、ビジネス全体を考えたとき、粗利益率だけにこだわりすぎないよう注意が必要です。
粗利ミックスの事例
ここでは、粗利ミックスの考え方をうまく使って利益を伸ばしている事例を2つご紹介します。
100円均一ショップ
100円ショップの商品は、価格は同一でもそれぞれ原価率が異なります。そのため、粗利は低いが購入率は高い商品の周辺に粗利の高い商品を配置するなどして同時購入を促し、全体としての利益率を確保しています。
ハンバーガーショップ
ハンバーガーショップでは、多くの場合ハンバーガー単体では粗利益率が低いです。そのため、粗利益率の高いポテトやドリンクなどとセット販売することで、一定の粗利益率を確保しています。
スーパーマーケットで粗利ミックスを活かすには
スーパーマーケットで粗利ミックスの考え方を活かすには、例えば以下のようなポイントがあります。
- 洋日配や加工食品などの価格設定は、ドラッグストアなどの売価に近づけて集客力を高める
- 野菜など売り上げ構成比の高い商品の粗利益率を下げ、「目玉商品」とする
- お惣菜などに付加価値をつけ、差別化して粗利益率を上げる
このように、顧客に対して「安さ」をアピールするグループで顧客を誘引し、付加価値などで「高利益」を狙うグループ商品を購入してもらうのが基本的な戦略となります。粗利ミックスの考え方を活かすためには、グループごとに異なった戦略を打ち出しながら全体で一定の粗利益率、粗利益額を保てるようにする必要があるでしょう。
まとめ
粗利ミックスとは、利益率の高い商品と低い商品を販売する場合に、相乗積という利益貢献度指標を用いながら戦略を最適化し、トータルでの利益を確保しようとする考え方のことです。この考え方が出てくる前はすべての商品で同じ粗利益率を設定していましたが、粗利ミックスの考え方を用いることで、集客のための商品と利益を生むための商品で異なった販売戦略を打ち出せるようになりました。今回ご紹介した事例や活かし方を参考に、粗利ミックスを取り入れて粗利益額の最大化をはかりましょう。
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