クロスマーチャンダイジングのメリットや手順、事例をご紹介
スーパーマーケットなどで商品陳列棚を見ているとき、買おうと思っていた商品の隣に関連する商品があってついつい一緒に買ってしまった、という経験はありませんか。それは企業が売上拡大のために用いる「クロスマーチャンダイジング」というマーケティング的な販売手法です。
今回は、クロスマーチャンダイジングの概要やメリット、大まかな手順、クロスマーチャンダイジングの事例について詳しくご紹介します。
目 次
クロスマーチャンダイジングとは
クロスMDとも呼ばれる陳列手法で、家電量販店、小売店、食品スーパーマーケットなどで使われています。そもそも「マーチャンダイジング」とは「商品を顧客に適切に届けるための戦略」のことを指し、クロスマーチャンダイジングとはこれに「抱き合わせ」「ついで買い」の考え方をプラスしたものです。
何か特定の商品を購入しようという意志を持って来店した顧客に対し、一緒に買いがちな関連商品を売り場で近くに並べて配置することで消費者の購買意欲を喚起し、非計画購買を促すというマーケティング的販売促進手法がクロスマーチャンダイジングと言えます。なお、関連商品を陳列することで「買い忘れ」を防ぎ、計画購買を促すという効果もあります。
「酒類とおつまみ」「野菜類と鍋のもと」などのクロスマーチャンダイジングのほか、素敵な生活、よりおいしく食べられるなど何らかのイメージ訴求に基づいて紐づく商品をセット販売するなど、自ら新しいトレンドを提案する形態のクロスマーチャンダイジングもありえます。一見関係がなさそうな商品どうしに関連性を持たせるクロスマーチャンダイジングが成功すれば、顧客に新しい価値を提供できるでしょう。
クロスマーチャンダイジングのメリット【店舗側】
クロスマーチャンダイジングのメリットについて、店舗側が享受できるものを2点みていきましょう。
売上拡大が望める
クロスマーチャンダイジングは非計画購買を促し、売り上げ拡大を望めます。顧客1人あたりの買い上げ点数が増えれば、客単価がアップしやすいでしょう。客単価は、以下の計算式で表せます。
客単価=平均単価×1人あたりの買い上げ点数
また、適切なクロスマーチャンダイジングでは必要性の高い商品を訴求するため、コストパフォーマンスをそれほど気にせず買ってもらいやすいです。そのため、利益率を上げやすいというメリットがあります。プライベートブランドの商品などは利益率が高いので、クロスマーチャンダイジングに適しています。逆に、利益率は低いものの消費者にとってコストパフォーマンスが良い商品を複数設置し、ついで買いの点数を増やして売り上げアップにつなげる方法もあります。
固定ファンが増える
顧客の心に響くクロスMDが打てれば、未来の企画に興味を持つ固定ファンを増やすことも出来るでしょう。訴求するイメージが想像しやすい場合は顧客の購買意欲を刺激しやすいため、売り場にポップを飾るなどの手段も有効です。
例えば、食卓に並べるメニューの新しい提案をするという手法があります。おいしいかどうかわからないものを、試してみたら意外においしかった、今後も試してみようとなれば、企画ごとに購入する固定ファンを生むことにつながるでしょう。
クロスマーチャンダイジングのメリット【顧客側】
クロスマーチャンダイジングのメリットについて、顧客側が享受できるものを2点みていきましょう。
新たな気付き
店舗側が関連商品を提案してくれることで、新たな気づきや買い忘れ防止につながります。例えば食品なら献立のバリエーションが増える、調理器具や日用品なら家事が効率化できる、などが当てはまるでしょう。自分では考えつかなかった有益な気づきを具体的な形で得ることは、顧客からみてメリットとなりえます。
買い物時間の短縮になる
クロスマーチャンダイジングでは関連商品が一つの売り場にまとまっているため、顧客がいちいちたくさんの売り場を回って商品を探す手間が省けます。買い物にかかる時間をできるだけ短縮したいという人は増えているため、クロスマーチャンダイジングの時短効果は顧客からみてメリットとなりうるでしょう。
クロスマーチャンダイジングの手順
クロスマーチャンダイジングは、概ね以下のような手順で行います。
STEP1:メインで売りたい品物を決める
まず、メインで購入対象となる商品を決めます。このとき、そもそもメインの商品自体、ある程度の購入数が見込めるものでなくてはなりません。メインの商品が売れないのに、関連商品だけが売れるということはほとんどないでしょう。また、目立つ売り場で展開することも顧客の注目を集めるために重要です。
売り場レイアウトについて詳しくは、以下の記事でご紹介しています。ぜひ、あわせてお読みください。
「スーパーマーケットの売場レイアウトには理由がある!品物別の法則をご紹介」
STEP2:活用シーンを考える
メインで売りたい品物が決まったら、その商品の活用シーンを考えて関連商品を選びましょう。「いつ」「どこで」「誰が」使うか考えると、おのずと活用シーンが想像しやすいです。関連商品を選ぶ際は、少量のパッケージだと手に取ってもらいやすくなります。特に活用シーンを新しく提案する場合、お試しで関連商品を「とりあえず買ってみよう」と思う層は多いため、できるだけ、気軽に買える少量パッケージを並べましょう。
STEP3:実際に陳列する
関連商品が決まったら、メイン商品と組み合わせて売り場に陳列します。ウイング陳列やフック陳列で見やすく、メイン商品を見ているときに視界に入りやすい場所に陳列するのがポイントです。
陳列手法について詳しくは、以下の記事でご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
「スーパーの売り場にはどんな工夫がされている?効果的なディスプレイとは」
クロスマーチャンダイジングの事例
クロスマーチャンダイジングの事例を、家電量販店とスーパーマーケットの2つご紹介します。
事例①:家電量販店の場合
家電量販店では、一人暮らし用の家電を並べて「新生活セット」などとして売り出している場合があります。一人暮らし用の家電を購入するのはこれから一人暮らしを始める大学生や新社会人などが多いことから、ターゲット層のニーズに合わせて活用シーンを提案することで、異なる家電をまとめて購入してもらいやすくなるでしょう。
実際に一人暮らしの空間をイメージした陳列を行うなど、より活用シーンをイメージしやすくなる工夫がなされることもあります。
事例②:スーパーマーケットの場合
精肉売り場でから揚げの素、焼き肉のたれなどを販売するケースです。メニューや食べ方の提案になるほか、関連商品を利用することで時短効果も訴求できます。スーパーマーケットの食品売り場では特に、こうした調理方法を提案するクロスマーチャンダイジングが行われることが多いです。
他にも、スーパーマーケットでは「豆腐とかつおぶし」「焼き魚と大根(大根おろし)」など、食べ合わせの良い組み合わせを提案することも多く見られます。これらは、既存慣習に基づいたクロスマーチャンダイジングの提案の一例です。
まとめ
クロスマーチャンダイジングは、商品同士の同時購入を狙った商品配置を行うマーケティング手法です。また、クロスMDを効果的に使えば売り上げ拡大のみならず、固定ファンの獲得も出来る可能性もあります。顧客側も買い忘れ防止、時間短縮などメリットが多いクロスマーチャンダイジング。今回ご紹介した手順を参考に、ぜひ売り場に取り入れてみてはいかがでしょうか。