スーパーの利益率とは?利益率を上げるためにはどうすればいい?
スーパーマーケットにおいて、単純な売上高だけでなく重要なのが「利益率」です。売上高のうち、何%が利益になったかのことを指します。利益率は店舗によっても部門によっても異なりますが、企業として目指すべきなのは単純に売上高だけを追うことではなく、利益率を上げることだと言えるでしょう。今回は、利益率の計算方法や部門ごとの目指すべき目標値、利益率を上げるための施策についてご紹介します。
利益率とは
利益率とは、売上高のうちどのくらいの割合が利益になったかを示すものです。このとき、小売業でよく使われる利益率の考え方としては主に「売上高総利益率」と「売上高営業利益率」の2種類があります。前者は粗利益とも呼ばれ、以下のように意味が異なります。
- 売上高総利益率…売上高から仕入れ値やロスを引いた分の利益を割合として表す。
- 売上高営業利益率…売上高から仕入れ値やロスはもちろん、店舗の地代や人件費、広告費なども差し引いた分の利益を割合として表す。
それぞれ、以下の計算式で求められます。
- 売上高総利益率…{売上高−(仕入れ値や廃棄、ロスなどにかかった費用)}÷売上高×100
- 売上高営業利益率…{売上高−(商品を売るためにかかった費用)}÷売上高×100
この「仕入れ値や廃棄、ロスなどにかかった費用」のことを「売上原価」と言います。「商品を売るためにかかった費用」の中には、売上原価に加えて人件費や広告費などの「販売費」、店舗の地代などの「一般管理費」が含まれます。そのため、総利益率と営業利益率を比べると、営業利益率の方が少なくなります。
売上原価を売上高で割ったものを原価率と言い、以下の記事で詳しく解説しています。
「スーパーの原価率とは?原価率の目安や適正化の施策もご紹介」
スーパーの利益率の現状
スーパーの利益率の現状を、日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、全国スーパーマーケット協会が発表している「2021年スーパーマーケット年次統計調査報告書」から解説します。
売上高利益率
売上高利益率は、その企業のブランド力や競争力を表します。小売店であるスーパーでは、仕入れた商品がどれだけ魅力的だったか、商圏におけるターゲティングが成功したかどうかの指標になり得ます。データでは売上高規模別に示されていますが、24〜28%が平均値であり、全体平均は約26%です。
また、2019年や2020年と比べると全体平均では徐々に上昇しているほか、売上高規模が大きい企業で1%未満の減少傾向、売上高規模が小さい企業で1%未満〜2%程度の上昇が見られます。
目標とする売上高利益率は商品ごとに異なる
売上高利益率については、商品ごとに目標とする利益率が定められています。これも前述の報告書から引用すると、以下のようになっています。
- 青果(野菜類・果実類・花)…22.8%
- 水産(干物や調味済なども含む魚介類)…28.3%
- 畜産(食肉類、ハムやベーコンなどの肉加工品)…28.6%
- 惣菜(おかず、揚げ物、弁当、おにぎり、インストアベーカリーなど)…37.0%
- 日配品(日常的に食べられる卵や乳製品、豆腐、納豆、パンなど)…22.3%
- 一般食品(調味料や瓶・缶詰、米、小麦粉、乾麺、菓子、酒類など)…19.1%
- 非食品(日用雑貨や医薬・化粧品、文具や雑貨など)…20.9%
惣菜の売上高利益率が他と比べて高い理由として、売上原価を抑えやすいこと、年間を通じて大きな価格変動が起こりにくいことが挙げられます。一方で、仕入れたものを仕分けして売るだけの青果やパック詰めするだけの水産・畜産などと比べ、店舗での調理が必要な惣菜には人件費などの販売費がかかることに注意が必要です。
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、企業が本業においてどれだけの収益を得ているかを表します。小売店であるスーパーでは、仕入れた商品をうまく配置できたか、POPなどの広告・宣伝は適切だったかなどの指標になり得ます。これもデータでは売上規模別に示されていて、1〜3%が平均で、全体平均は約2%です。
規模別に細かく見ると、売上高規模が大きいほど営業利益率は高く、売上高規模が低いほど営業利益率は低い傾向にあります。また、2019年や2020年と比べると、全体平均でも、売上高規模が大きくても小さくても、概ね1%前後の上昇を見せています。
売上高利益率と売上高営業利益率から読み取れること
両方のデータを見てわかることは、粗利益(売上高利益率)、すなわち売上から仕入れ値や廃棄を引いた利益で見ると売上高の規模が大きな大手企業ほど利益率が低めな傾向にあった反面、人件費や地代を差し引いた売上高営業利益率では大手企業ほど利益率が高いことです。これは、大手企業ほど販売費や一般管理費を抑え、本業による最終的な利益率を上げているということだとわかります。
では、これを踏まえてスーパーが利益率を伸ばすためにはどのような戦略を取ればいいのか、次章でご紹介します。
スーパーが利益率を伸ばすためには?
スーパーが利益率を伸ばすためには、以下の3つのポイントをおさえましょう。
前述のデータから読み取れる、最も大きなポイントです。スーパーにおける販売費や一般管理費として、以下のようなものが挙げられます。
- 人件費
- 販売手数料
- 広告宣伝費
- 通信費
- 消耗品費
- 輸送費
- 地代
販売手数料とは、クレジットカードやキャッシュレス決済など決済システムに支払う手数料が当てはまります。これら販売費や一般管理費を抑えるには、占める割合の大きい地代や人件費、広告宣伝費などの見直しがおすすめです。
地代については店舗を出店する前に、入念なエリアマーケティングを行うことで売上高に見合うコストとして計上できる範囲かどうか考えるといいでしょう。エリアマーケティングについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
「エリアマーケティングとは|売れる店舗づくりのための分析・戦略」
人件費や広告宣伝費を抑えるには、店舗DXの考え方が有効と言えます。セルフレジやデジタルサイネージを使えば、初期投資は高いかもしれないが、長い目で見て人件費や広告宣伝費の節約になるケースが多いです。店舗DXについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
「店舗DXをスーパーで行うには?具体例とメリットをご紹介」
売上原価を抑える
売上原価を抑えるには、以下の3つの手法が挙げられます。
- 仕入れ値そのものを下げる
- 廃棄やロスを減らす、適切な在庫管理を行う
- PB(プライベートブランド)やSB(ストアブランド)を作る
仕入れ値そのものを下げる方法は、あまり期待できません。特に近年では社会情勢の変化により、さまざまな店舗で値上げが起こるなど、原価率が上がっています。そこで、適切な在庫管理を行って廃棄やロスを減らすことや、店舗独自のプライベートブランドやストアブランドを作り、輸送費や在庫管理のコストを減らすことなどが現実的でしょう。
売上高を上げる
売上高を上げるためには、以下の3つの手法が挙げられます。
- 販売価格を上げる
- 集客を行う
- ロイヤルカスタマーを育てる
これもむやみに販売価格を上げると、顧客離れを引き起こすリスクが高いため、あまり期待できません。そこで、集客を行うか、ロイヤルカスタマーを育てることの2つが戦略として考えられます。
集客では、前述のエリアマーケティングの他、適切なターゲティングやメディア戦略などがあります。詳しくは、以下の記事で紹介しています。
「スーパーマーケットの集客方法を知ろう!現状や必要なことも合わせて解説」
集客が見込めない場合は、現在の顧客の来店頻度を上げたり客単価を上げたりするロイヤルカスタマー化が重要です。ロイヤルカスタマーを育てるための施策や考え方は、以下の記事で詳しく紹介しています。
「スーパーマーケットが顧客の来店頻度を上げるコツ|選ばれる店舗の条件とは」
まとめ
スーパーの利益率を考えるとき、主に売上高利益率(粗利益率)と売上高営業利益率の2つの指標があります。この2つの違いは、販売費や一般管理費を考えるかどうかです。大手企業ほど、販売費や一般管理費を抑え、売上高営業利益率を上げていることがデータからわかっています。スーパーで利益率を伸ばすためには、この手法のほか、売上原価を抑えたり、売上高を上げたりする考え方が重要です。詳しく紹介した記事もぜひ参考にしてください。