スーパーの原価率とは?原価率の目安や適正化の施策もご紹介
スーパーマーケットで利益を出すには、「とにかく売上をあげればいい」と考えがちですが、意外に見落とされがちなのが原価率です。スーパーマーケットにおいて、原価率とはどのように考えれば良いのでしょうか。本記事では、原価率の基本的な考え方に加え、各商品の利益率との関係や、原価率を適正化するための施策についてもご紹介します。
目 次
小売業における原価とは
まず、小売業における原価について確認しましょう。
仕入れ原価
仕入れ原価とは、商品を仕入れや、製造するための原材料購入にかかった費用のこと。最終的に実際に商品が売れたかどうかに関係なく、仕入れの時点でかかった費用を指します。
売上原価
売上原価とは、ある期間内で実際に売れた商品に関わる、仕入れや製造にかかった費用のことを指します。このとき、単純に販売した商品の仕入れ高だけが関係するのではなく、万引きや廃棄などによるロスも含まれることに注意しましょう。
なお、製造業では製造加工費や人件費も含まれますが、一般的に小売業では製造や加工をしないため、これらの費用は売上原価として含まれません。
小売業における原価率の計算には、売上原価を使う
前述のように、小売業ではロスを考える必要があるため、原価率の計算には仕入れ原価ではなく売上原価を使う必要があります。一般的に、小売業では他の業種と比べて売上に対する原価率が高いことから、原価率を適正に設定することが利益アップに必要不可欠です。
原価以上の金額で販売しなくては利益が出ないため、売上原価や原価率を正しく把握しましょう。
小売業における原価率とは
次に、小売業における原価率について考えます。
原価率の基本
原価率の基本は、「商品の売上に対して仕入れの金額がどのくらいかかったか」がポイントです。例えば、仕入れ値が60円の商品を100円で販売した場合、原価率は60%となるのが基本の考え方です。
ただし、最初にご紹介したように、小売業、特に生鮮食料品を扱うスーパーマーケットの場合は、万引きや廃棄によるロスを計上する必要があります。この原価率が低いほど、利益(利益率)が高いと言えます。
売上原価、売上原価率の計算方法
原価率の計算式は、基本的に以下のように求められます。
原価率=売上原価÷売上高
売上高=売上原価(原価)+売上総利益(粗利益)
例えば、60円で200個仕入れた果物を1個100円で売ったところ、190個が売れ、廃棄によるロスが10個あったという場合の計算式は、以下のようになります。
仕入れ原価=60×200=12,000円
廃棄によるロス=60×10=600円
すなわち、売上原価は12,000円+600円=12,600円となります。
一方、売上原価率は以下のように計算します。
売上高=100×190=19,000円
12,600÷19,000=0.663…≒66%
つまり、このときの売り上げ原価率は66%となります。
廃棄率とは
廃棄率とは、主に生鮮食料品や惣菜を販売するときに用いられる指標で、売れ残り販売できず、廃棄してしまった商品のことを指します。前述のように、果物や野菜などは時間が経つにつれて傷んでしまうため、やむなく廃棄しなくてはならないこともあります。
この場合は仕入れ原価だけかかって利益が出ず、売上原価だけがかさむことになるため、廃棄率をできるだけ少なくすることも原価率を低くし、利益率をアップするために重要な考え方です。
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原価率が重要な理由
小売店が利益を上げる、業績を上げるためには、3つの方法があります。
- 売上を伸ばす
- 経費を減らす
- 原価率を下げる
経費を減らす努力は当然ほとんどの企業がしていることで、イメージもしやすいでしょう。売上を伸ばすならマーケティングなどの手法があり、これも浸透しています。しかし、原価率を下げるというポイントに着目できている企業はまだまだ多くありません。原価率を下げることは、売上を伸ばすのと同じように利益アップに直結するため、原価率に着目することも重要です。
スーパーにおける利益率の目安
では、スーパーにおける利益率とはどのくらいなのでしょうか。ここでは、一般的な目安について見ていきます。
利益率とは
ざっくり言えば、売上高から売上原価を引いたものが利益率なので、1-原価率=利益率と考えられます。実際には人件費や設備費、輸送費などさまざまな要素が加わってくるため、一概には言えませんが、概ね以上のように考えて良いでしょう。
毎年、日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、全国スーパーマーケット協会が発表している「2021年スーパーマーケット年次統計調査報告書」によれば、スーパーマーケットで取り扱う商品の目標とする利益率は以下のようになっています。
青果…22.8%
水産…28.3%
畜産…28.6%
惣菜…37.0%
日配品…22.3%
一般食品…19.1%
非食品…20.9%
青果とは、野菜類・果実類・花の3品目を指します。水産とは魚介類だけでなく、干物や西京漬なども含まれます。畜産には食肉類のほか、ハムやベーコンなどの肉加工品も含みます。
惣菜は非常に種類が多く、店舗で作っている一般的な惣菜や揚げ物のほか、折詰料理、弁当、おにぎり、寿司、インストアベーカリーなども含まれます。上記のように惣菜の利益率が高いことから、惣菜を販売する面積を増やして売上アップをはかる店舗もあるほどです。
青果にくらべて手間がかかっている惣菜の利益率が高い理由として、年間を通じて大きな価格変動がないことがあります。青果は豊作・不作などによって価格が変動するが、惣菜はメニューを変えるなどの工夫によって一定の原価率、利益率を保ちやすいのです。
日配品とは食品の中でも卵や乳製品、豆腐、こんにゃく、納豆や佃煮、パン、冷凍食品やアイスクリームなど、日常的に食べられる食品のことを指します。一般食品とは、上記全てに含まれない食品調味料や瓶・缶詰、米、小麦粉、乾麺、菓子や酒類などを言います。非食品とは、日用雑貨や医薬・化粧品、家具インテリア、文具や衣料などのことです。
利益率については以下の記事で詳しく紹介しています。
スーパーの利益率とは?利益率を上げるためにはどうすればいい?
小売業における原価率の目安
上記の利益率の例を見てもわかるとおり、スーパーマーケットの原価率は概ね75%くらいが目安とされています。百貨店やデパート、雑貨店が50〜60%であることを考えると、スーパーマーケットの原価率はどうしても高くなりやすいです。もし、自社や店舗の原価率が75%よりも高い場合は、原価率を下げるための施策を考えるのが良いでしょう。
原価率を適正化するための施策とは?
原価率を適正化するための施策には、以下のような手法が考えられます。
- こまめに棚卸しを行い、廃棄率を下げる
- 人員配置を見直す
- 販売価格を見直す
- 仕入れ量を増やし、単価を下げる
まず初めに行うべきなのは、商品のロスを防ぐことです。万引きなどの犯罪防止対策は基本的にほとんどの店舗で行っているでしょうが、廃棄率を下げるための対策として棚卸しを行うのは意外に見落とされがちです。また、人員配置を見直し、余剰人員を削減して人件費を適正化するのもおすすめ。DX化、デジタル化などで業務効率化をはかるのも良いでしょう。
店舗DXについては、ぜひ以下の記事もご参照ください。
店舗DXをスーパーで行うには?具体例とメリットをご紹介
一方、販売価格を上げたり、仕入れ量を増やして単価を下げたりするのはあまり現実的ではありません。商品の価格を据え置いたまま分量を減らす、実質的な値上げ方法もありますが、よく買っている人にはすぐわかってしまいますし、SNSなどで広まる可能性も考えると、あまり印象が良くありません。仕入れ量を増やして単価を下げる狙いは薄利多売ですが、思ったようにたくさん売れるとは限らないでしょう。
まとめ
スーパーマーケットにおける原価率とは、売上原価で考えます。売上原価には単純な仕入れ原価だけでなく、廃棄や万引きなどによるロスも含まれます。そのため、原価率を下げることが利益アップに直結することから、原価率を下げることが重要です。スーパーマーケットの原価率の目安は75%と高いです、これより高ければ、ぜひ適正化するための施策を行ってみてはいかがでしょうか。