スーパーマーケットがアプリを導入するメリット・デメリットと今後の展望
スマホやインターネットの普及が進み、スマホアプリを利用する人が圧倒的に増えた昨今では、自社アプリを導入するスーパーマーケットが増えています。ポイントカードやチラシの代わりになるほか、クーポンやお得情報をプッシュ配信したり、購買履歴をチェックしたりとさまざまなメリットがあるスーパーマーケットアプリ。本記事では、実店舗がスーパーマーケットアプリを導入するメリット・デメリットや、スーパーマーケットアプリの今後について解説します。
目 次
スーパーマーケットがアプリを活用する意義
かつて、スーパーマーケットの広告といえば新聞などの折込チラシが主流でした。しかし、紙の新聞を購読する家庭が減少したことなどにより、折込チラシでは費用対効果が十分に得られなくなってきました。そこで、新たなプロモーション手段としてアプリを活用する手法があります。
また、スーパーマーケットはこれまで生鮮食料品など、スーパーマーケットでないと取り扱っていない商品があることから一定の売り上げを見込むことができていましたが、コンビニ、ドラッグストアなど競合店舗が勢いを増しており、スーパーマーケットも集客やマーケティングを考える必要が出てきました。
最近ではコンビニやドラッグストアでも、生鮮食料品や惣菜を扱うところが出てきたことから、ますますスーパーマーケットが競合店舗との差別化をはかる必要が増しています。そんな中、スマホアプリの利用が買い物満足度アップにつながる可能性を示唆した調査もあり、ポイントカード機能やロイヤリティプログラム機能などを持つアプリが買い物満足度を高めていると推測されています。
参考:流通情報「スーパーマーケットのスマホアプリ活用に向けた考察」
スーパーマーケットアプリの機能
一般的なスーパーマーケットアプリが持つ機能には、以下のようなものがあります。
- チラシ
- クーポン
- 会員カード
- ポイントカード
チラシは折込チラシをPDF化しただけのものも多いのですが、プッシュ通知で届くようにしておくことで、紙媒体より早く情報を入手できるため、買い逃しが起こりにくくなります。自宅近くのお店をお気に入りとして登録しておき、お店限定の特売情報を手に入れることも可能です。
また、クーポンやお得情報をプッシュ通知で知らせることができ、ターゲティングによる配信も可能です。例えば、ファミリー層と見られる顧客なら大容量パック、来店頻度の高い顧客ほど配信頻度高めにする、ロイヤリティをつけるなど、顧客に合わせた情報を配信することで、顧客満足度アップにつながりやすくなります。
最初にもご紹介しましたが、店舗アプリは会員カード・ポイントカードなどロイヤリティプログラムにも利用できます。紙やプラスチックのポイントカードだと、消費者側は忘れるというデメリット、企業側からは印刷コストというデメリットがあるのが課題でした。しかし、アプリに入れてしまえば忘れないうえに、印刷コストもかかりません。
スーパーマーケットアプリのメリット
スーパーマーケットアプリのメリットとして、以下の4つのポイントが挙げられます。
顧客との接点になる
カスタマージャーニーの考え方からも、顧客とのタッチポイントは重要です。そこで、身近なスマホアプリをタッチポイントにするという方法があります。アプリアイコンやアプリトップ画面のデザイン、UIでのブランディングもはかれます。
ECサイトでは既に行われている、1 to 1マーケティングの考え方を実店舗へ導入する足がかりにもなります。以前から実店舗では会員カードからID-POSデータを収集、購買履歴と合わせて分析・活用することができましたが、この手法では最終的な「購買」という部分しか捉えられておらず、カスタマージャーニー全体としては非常に局地的なデータしか得られていません。そこで、スマホアプリ内のチラシ閲覧率、情報閲覧率などと購買情報を合わせ、カスタマージャーニーを分析するのが有効です。
また、プッシュ通知でリアルタイム情報を発信できるため、メルマガなどよりもさらに早い情報配信が可能です。プッシュ通知ではメルマガの件名より情報がわかりやすく、見やすく表示されるため、情報を開封してもらえる確率が高まり、より確実に消費者に情報を届けられます。
購買促進につながる
会員カードやポイントカードと連携し、ロイヤリティプログラムにつなげられます。これまで各店舗は紙媒体での会員カードやポイントカード、スタンプカードなどを発行してきましたが、財布がかさばる、管理が煩雑になって忘れやすいなどのデメリットも大きかったのです。
しかし、スマホアプリなら忘れることも、かさばることもありません。消費者にとっての利便性がアップし、利用率が改善されることで、リピーターも獲得しやすくなるでしょう。
プッシュ通知でクーポンを配信し、直接的に購買促進することもできます。誕生日クーポン、記念クーポンなどのほか、お気に入り店舗を登録してもらい、近くの店舗からクーポンをプッシュ通知で配信するのも良いでしょう。アプリと非接触決済を融合している店舗もあり、アプリの導入で消費者にとってより買い物しやすい流れを作ることもできます。
顧客データの収集・分析ができる
アプリの導入で、購買履歴とクーポン利用履歴、プッシュ通知の開封率など、個人情報と紐づかない顧客データの収集・分析につなげられます。取得データからクーポン配信やロイヤリティプログラムへのフィードバックも可能です。また、売れ行きの良い商品とアプリの配信データを照らし合わせ、顧客のニーズをより深く理解することもできます。
店舗サービスの改善につなげられる
アプリ内にアンケート機能や問い合わせ機能などを設置し、顧客のニーズを吸い上げられれば、実店舗でのサービス改善にも役立てられます。
スーパーマーケットアプリのデメリット
スーパーマーケットアプリのデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
プッシュ通知の頻度に注意が必要
プッシュ通知の頻度には気を配りましょう。特に、来店頻度が高くない顧客に毎日のように通知を送ってしまうと、不快に思われるリスクも高いです。配信頻度は、来店頻度やアプリ利用頻度に合わせて分けましょう。逆に、利用頻度が高い顧客にはより顧客に合わせた情報や割引率の高いクーポンなどを配信し、ロイヤルカスタマー化をはかるのがおすすめです。
開発や維持のコストがかかる
自社アプリは、どうしても開発や維持に費用がかかります。開発費用の相場は数百万円ともされ、アプリは開発して終了ではなく、安定して利用してもらうための維持コストもかかることを念頭に置かなくてはなりません。何らかの不具合が起こった場合、修正してバージョンアップ版を配信する必要もあります。
スーパーマーケットアプリの今後
スマホが最も身近な情報機器となった昨今、スーパーマーケットアプリは今後もますます利用が拡大していくでしょう。スマホアプリの通知に慣れている人は多く、アプリのプッシュ系施策そのものにネガティブな印象を持つ人は少ないともいわれています。そのため、実店舗の集客にアプリを使うのはスタンダードになりつつあります。
今後は他社との差別化をはかるため、スーパーマーケットアプリにも独自性が求められるのではないでしょうか。例えば、スマホアプリの利用層に合わせた情報やコンテンツを組み込む方法があります。若年層ではSNSで情報拡散するため、写真や動画を共有することも多いです。
そのためには、アプリに利用者同士が発信・交流できる機能をつけたり、外部SNSと連携する機能をつけたり、店内での撮影にどれくらい許可を出すか決めておく、などの対応が必要になるでしょう。このように、スマホアプリでは単に新規顧客を開拓するのではなく、既存顧客のロイヤリティを高め、LTVをアップするという視点が重要です。
まとめ
スマホアプリは紙媒体だったチラシやポイントカード、会員カードなどを集約してより消費者が使いやすくするだけでなく、プッシュ通知によって積極的に顧客とコンタクトをとることも可能なアプローチ手法の一つです。
また、通知の開封率や購買履歴の記録などで、個人情報と紐づかない顧客データを収集・分析し、品揃えなど店舗運営の改善にも役立てられます。今後はさらに競合と差別化するために、スーパーマーケットアプリにも店舗それぞれの独自性が求められるでしょう。