スーパーマーケット業界の動向を施策に活かそう!業界や消費者動向を徹底解説
手軽にものが手に入るようになった近年、小売業界は常に厳しい状況に立たされています。これからの生き残り戦略を成功させるには、自社の置かれている状況を正しく理解したうえで対策を講じなくてはなりません。
今回は、スーパーマーケット業界や消費者・他社などの動向を資料から得た内容を解説しつつ、動向を意識した対策方法をお伝えします。
目 次
スーパーマーケット業界全体の動向
まずはスーパーマーケット業界や消費者・小売業の競合他社などの動向を把握しましょう。一般社団法人全国スーパーマーケット協会発表「2023年度版スーパーマーケット白書」から得られる情報をもとに、業界全体の動向を解説します。
売上と店舗数は増加傾向
2022年度は店舗売上・店舗数ともに増加傾向にあります。新型コロナウイルス感染症による外出・外食自粛の影響から、自宅で食事をとる機会が増えたことが影響しているようです。
「2023年度版スーパーマーケット白書」によると、2022年スーパーマーケット業界の総販売額は約25.5兆円、売り場面積1200~1600㎡店舗における年間売上高は約14億円となりました。
同資料の2022年のスーパーマーケット動向の「年間販売動向概況」と比較すると、全店ベースで総販売額は100.8%と、前年実績を上回っています。一方、既存店ベースでは99.5%と、前年実績を下回っています。
また店舗数に関する記載によると、店舗数も増加傾向にあります。2022年度の店舗数は、全国2万3,028店舗にもなりました。前年比プラス226店と、こちらも順調に伸びてきています。
商品カテゴリー別の売上推移
次は商品カテゴリー別の売上推移を確認しましょう。こちらの内容も「2023年度版スーパーマーケット白書」の「年間販売動向概況」に記載されています。
商品カテゴリー別の売上では、全店ベースで2019年と比較すると総菜部門が104.4%と最も伸び率が高くなりました。続いて日配カテゴリーの101.2%が高水準となり、2019年並みの実績を打ちだしています。これは、相次ぐ値上げと冷凍食品の好調が影響していると考えられます。
いっぽう、青果・畜産・水産を扱う生鮮品カテゴリーや一般食品カテゴリーは、単価自体は上昇したものの、2019年比で下回る結果になりました。
また、マスクをはじめとする衛生用品を含む非食品部門も、95.3%とマイナス幅が最も大きい状態です。これはコロナ特需からの反動が関係しています。
ネットスーパー普及はあるものの実店舗で購入する顧客も多い
新型コロナウイルスによる影響は、買い物の仕方にも変化を生み出しました。外出自粛の影響から注目されているネットスーパーですが、普及率自体は高まっているものの、利用率は約40%にとどまっています。
ネットスーパーで購入されるものも、実店舗とは異なる特徴があります。以下3つのものは、消費者がネットスーパーでよく購入しているものです。
- 飲料水や大容量の調味料などの重たいもの
- 消費者がメーカーや製品を指定して活用しているもの
- 機能・効能が明確なもの
商品を宅配してもらえる傾向から、重たいものを購入する消費者が多い傾向にありました。また、消費者にとって必ず購入する製品や、どこで購入しても変わらないものを購入するときにもよく活用されています。
一方、実店舗ではどのようなものが購入されているのでしょうか。実店舗の場合、まだ見ぬ商品との出会いや、安く購入できる商品を求めてやってくる消費者が多いようです。それぞれのニーズをまとめると、このようになります。
- ネットスーパー:重たい商品や定番品を手軽に購入したい
- 実店舗:新しいメニューやレパートリーを広げられる商品と出会いたい
このことから、これからのスーパーマーケット経営では、ネットスーパーと実店舗ごとに違う需要をおさえた商品展開が重要になるといえます。
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競合との関係
次に、競合である他業態との関係を解説します。「2023年度版スーパーマーケット白書」によると、スーパーマーケットからドラッグストア・宅配や通販・ECにシフトしたのは、-0.23%となっています。
これは、2021年から始まった加工食品の値上げの影響によるものです。節約志向の高まりにより、より安く購入できるドラッグストアや宅配・ECでのまとめ買いが行われるようになりました。また、消費者庁者によると、消費者がスーパーマーケットに求める商品も変化しています。
- スーパーマーケットに求めるもの:生鮮食品や全体的に安い価格
- ドラッグストアなどにもとめるもの:いつでも安い商品や高額商品を安く買えるチャンス・ポイント
このことから、顧客は常にローコストな商品を購入したいだけでなく、普段買えない商品をお得に変えるチャンスを欲していることが分かります。この需要を理解しない限り、小売業界で生き残るのは難しいでしょう。
スーパーマーケットが今後も存続するには、以下の戦略を立てていく必要があります。
- ローコスト体制をベースにしつつ自社の強みであるカテゴリーを磨き、集客の柱を作る
- 粗利を削ってでも価格を出し、同業他社との差別化を図ることで利益性の高い商品を開発・効果的に販売する
- ドラッグストアなどにはない総菜やローカルブランドなどの品ぞろえを充実し客単価を高める
いかに自社の魅力を引き出し、差別化を図るかが重要なポイントです。経営戦略を考える際は、まずは自社の強みや他社との違いを分析しましょう。
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スーパーマーケットのM&Aの現状
次に、スーパーマーケット業界のM&Aについて解説します。現在、最大手であるイオンやセブン&アイ・ホールディングスを中心に、業界では積極的な買収が行われています。
これは、地域性の高い中小企業も例外ではありません。地域に根差した中小スーパーマーケットをM&Aで獲得する傾向も強まっています。これに対し、地域の中小企業は資本業務提携などで協業しながら対抗している状態です。「うちは小さい店だから関係ない」とは言えない状況にあるといえます。
スーパーマーケットが顧客を確保するための施策
現状、売上や店舗数は増えていますが、他業態や競合他社への対策が必要な状態です。しかし、価格面で利益を出しつつ差別化を図るには、商品だけでは難しいでしょう。
スーパーマーケットが顧客を確保するには、さまざまな方向から考えられた施策が必要です。最後に、これからのスーパーマーケット業界を生き残るために有効な施策を解説します。
PBの開発や充実
プライベートブランドは、広告費などの費用を削減できる分、商品の品質や性能に注力できます。高品質な商品を低価格で提供できれば、他社との差別化に役立つでしょう。戦略としては、PBで他社との差別化を図りつつ、ほかの利益率が高い商品を購入してもらえるような体制を整えます。
PBの企画開発やM&AによるPB事業の強化などが有効ですが、スーパーマーケットの強みを活かすのもよい方法です。現在売上が向上している総菜部門などに力を入れ、顧客の需要を満たせるようなメニューを開発すれば、利益を出しつつブランディングできるでしょう。
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特定層をターゲットにした施策や施設の充実
スーパーマーケットを利用する機会が多い顧客を集客できる施策や設備を充実させるのもよい方法です。実店舗の価値を高めつつ、他店との差別化を測れます。施策の例としては、以下のようなものがあります。
- 特定の年齢や属性の顧客が使いやすい設備を入れる
- 地域のお祭りなどに合わせた商品の販売や出店の出店
- 特定の属性にターゲットを絞ったクーポン券の配布
- 子供向け設備の充実
特に、家族連れを確保しやすい子ども向けの設備導入がおすすめです。きゃらくるカートは、子ども連れの家族が安全かつ楽しく買い物できる工夫を行っています。特定層へ向けた施策を検討する際は、ぜひご活用ください。
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スーパーマーケット業界の現状を正しく理解しよう
スーパーマーケットがこれからの小売業界で生き残っていくには、他業種・多店舗との差別化が重要です。施策を検討する際は、どうすれば店舗の魅力を伝え、ブランディングできるかをよく考えましょう。
この記事がスーパーマーケット業界の現状を把握する際の参考になれば幸いです。